安全な方針

生物多様性と生態系の生産性や安定性との関連において・・・


私たちの理解や知識が必ずしも十分でない現状では、生態的な機能維持に関して生物多様性低下の許容レベルなどを設けることは、個別の生態系を対象とした場合においても困難です。


現状では、生物多様性の低下、種の絶滅は何らかの生態的な機能変化を伴う危険があると考え、自然の豊かな生態系については、目標を少なくとも現状の生物多様性の維持に置くことが必要でしょう。


そして、それは、「種を絶滅させない」という目標によって実現されます。


絶滅させないようにするための当面の目標は、「個体群が自然の変動を超えて衰退することがないようにする」ということ。


ここでサクラソウの保全に関して具体的な提案を行ったように、種の絶滅や衰退を防ぐということは、適切な管理をするということにほかならないのです。


種や個体群を保全するための管理は、試行錯誤を伴う生態系レベルの実験でもあります。


その過程で、生物多様性の成り立ちや生態系の機能や安定性との関係などについて、私たちの理解は大いに深まるはずです。


保全生態学は具体的な実際的課題を扱いながら、生態学の基礎的な問題にも迫ることができる研究分野です。


機能と多様性 3

生態系の安定性というものは、どのくらいのタイムスケールでそれを考えるかによって、この問題のとらえ方も大きく変わってきます。


ごくまれに起こる大きな異変に対して生態系が安定であるために必要な種の多様性は、通常の変動に対して安定性を維持するために必要な種の多様性に比べて、ずっと大きいことも考えられます。


今、私たちが、取り組まなければならないことは・・・


個々のケースについて正確な予測を可能にするような一般的な手順を検討することでしょう。


そのためには、操作可能な自然生態系あるいは実験生態系から種を人為的に取り除くことの影響を、さまざまな側面から検討するような実験的なアプローチと、生態系としての現実性を備える限りで・・・


しかもできる限り単純なモデルを用いた理論的な分析を合わせて行い、発見的なアプローチによって有効な分析手順を見い出していくことが必要であると思われます。


さて最近では、開発によっていったん失われた生息・生育場所や森林や草原を、人工的に回復するための事業が行われることもあります。


人為的に種が導入される復元は、多様性と機能の間の関係を実験的に検討するための、またとない機会ともなります。

機能と多様性 2

生態系における種の組み合わせ次第で、生態系がさまざまな異なる「生成的な(単独の要素にはみられない性質がその集合体に生じる)」性質をもちうるとすれば・・・


この考え方が最も妥当であるとしなければならないでしょう。


一つ一つの生態系が固有の「多様性機能・安定性」関係を示すのであれば、安易な一般論に頼った推論は慎まなければならないということになります。


結局、現在の生態学の現状では、目前の生態系から特定の種が絶滅すると生態系にどのような機能上の変化が表れるのか・・・


それについて正確な予測をすることは、ごく特殊な例を除いてきわめて困難だといわなければならないでしょう。


無生物的な環境条件だけでなく、偶然に大きく支配される生物の分散過程や生物間相互作用の結果として形成された生物相、種の間に網の目のように張りめぐらされた生物間相互作用のネットワークのもたらす固有性と複雑さが、安易な予測を許さないのです。


・・・もし、固有説が妥当だとすれば・・・


何らかの機能が種多様性の変化に対してどのように反応するかは、生態系ごとに、喪失する種ごとに、または問題とするプロセスごとに検討するべき事柄であるということになります。

機能と多様性

機能については余剰なものが、生態系の安定性を保障するうえではきわめて重要な意味をもつことがあります。


なぜなら、同じ機能グループに属す種の数が少なければ少ないほど、一種の絶滅によってその機能が失われる危険性が高いです。


しかし、多数の種を含む機能グループによって担われる機能は、何種もが絶滅しても大きく変化することなく安定的に維持されるからです。


冗長度説は、抽象的な機能グループを考えている限りでは、常識で理解しやすい合理的な説明です。


しかし、「同じ機能を担う」ということをどの程度厳密に考えるか・・・


つまり、大ざっぱな機能の共通性だけを問題にするか、細かい点に至るまでの機能の共通性を求めるかで、機能グループの認識自体が大きく変わってきます。


機能を細かくみていくと、生態系のなかに機能のうえで全く相等しい種がいることはありえないということになり、種の数だけ機能グループを考えなければならなくなります。


・・・以上の三つの考え方は、生態系の機能・安定性と生物多様性とが何らかの明瞭な関係をもつとするものです。


それに対して固有説では、生物多様性と生態系の機能・安定性との関係は、それぞれの生態系によって固有なものであるとしています。

地下の国へ行った弟 6

屋久島の民話、「地下の国へ行った弟」その6です。


川をぶじに渡った弟は大蛇の皮をぬごうとしましたがなかなかぬけません。


そこで、


「えいっ」


と力をいれたら、さらりとぬけました。


それからどんどん歩いて行きました。


そのうち夕暮れになりました。


墓場の近くを通ると、たくさんの人たちが集まっていましたが、弟を見て、みんなが、


「あっ」


と口ぐちに叫びました。


「うわあ、モーエ(幽霊)じゃ。弟のモーエが出たァ。」


人びとは驚きあわてました。


それもそのはず、そのとき、人びとは弟の一年忌の供養をするところでした。


下の国の一日は上の国の一年にあたっていたのです。


弟も驚いてしまいました。よく見ると知った人ばかりです。そこで、


「おいおい、あれじゃ。モーエじゃなか、たしかに弟じゃ」


と人びとをなだめました。そこで今度は、


「弟が生きておったどう。弟がもどったどう」


と人びとは大喜びで村中にふれ歩きました。石塚孝一氏によると、やがて弟が家にもどってみると、いちはやく弟の帰りを知った兄は腹を切って死んでいました。


「なしけ死んだか。死なんでもよかったものを。」


弟は兄の死がいにとりすがって泣きました。


その後、弟は兄の財産を全部うけつぎ、兄が山からつれてきた女と夫婦になって、一生を安楽にくらしましたそうな。


そんほさのむかし。


地下の国へ行った弟 5

屋久島の民話、「地下の国へ行った弟」その5です。


「ああ、こりゃ不思議なこともあるもんじゃ。」


弟は尻をなでながら向うへ歩いてみました。


ところが、頭のひらべったい、おかしなかっこうの人間たちが何人もいました。


「おい、そのびんた(頭)はいけんしたとや。」


「おまえたちの国からおさえられて、びんたまで、ひらたくなっているのじゃ。ここは下の国じゃよ。」


「ほほう。そうか。ところでおれは腹がへったから飯を食わせてくれんか。」


「じつはおれたちも食うものがなかのじゃ。その先で鹿が作物を荒らしてしまった。


その鹿をおまえの矢で射殺してくれんか。その鹿をおれたちにも食わしてくれ。」


弟はその畠に行って待ちぶせていて、みごとに鹿を射止めました。


そして火で焼いて下の国の人たちと腹いっぱい食べました。


「ところで上の国へもどる道はなかか。」


「あることはあるばって、途中に大きな川がある。


その川に大蛇がおるから、だれもそこを通ることができない。


じゃばってん、その大蛇におとうしゅうなかじゃいば、大蛇がぬけた皮がここにあるからそれをかぶって行くがよい。」


そこで、弟は大蛇のぬけがらをかぶってどんどん歩いて行きました。


なるほど途中に川があります。


大蛇が赤い目を光らせて、シャバ、シャバ、シャバと、音を立てて寄ってきました。


が、大蛇の皮をかぶった弟を見ると、大蛇はくるっと向きをかえて、またシャバ、シャバ、シャバと、向うへ泳ぎ去って行きました。


地下の国へ行った弟 4

屋久島の民話、「地下の国へ行った弟」その4です。


「この人は、前々の晩に、化けものがつかまえてまだ食わなかった女子じゃ。」


「化けものは殺したか。」


「うん。息の根をとめたから大丈夫じゃ。わざわいか太か山コブ(蜘蛛)じゃったよ。」


「そうか。そいじゃ、もう、もどろうか。」


「いや、ちょっと待ってくれ。山コブの頭の中に光る玉がはいっておったが、あれを取ってくるから。」


弟はふたたび穴の中にありて、山コブの頭を切り割って、玉を漁ぎ取りました。


そしてカズラにしがみついて登りなした。


「ほァ、兄さん、山コブの玉じゃ」


と弟が片手で玉をさしだしたとき、兄はその玉を取るやいなや、弟がまだしがみついているカズラをばっさり切ったからたまりません。


弟は、ドドーと音を立てて穴の暗やみの中に落ちていきました。


しかし、不思議なことに別にケガはありませんでした。


「主ばかりよかことをやろうかと思うて、ほんとうになさけないもんじゃ。」


弟は残念でたまりません。


しばらく泣いていましたが、ここで死ぬより、何とかぬけだす方法はないものかと、穴の中をぐるりとまわってみました。


隅のほうに人間一人はいるくらいの穴がありました。その穴にはいってみました。


「あっ。」


弟のからだは、どんどん落ちて行きました。そして、いやというほど尻を打って止まりました。


痛くてしばらくは立てません。


そのうち空腹をおぼえてきました。


ようやく立ちあがって、まわりをよくよく見ると、不思議なことに向うに広い世界がひらけているのです。

地下の国へ行った弟 3

屋久島ツアーで人気の屋久島民話、「地下の国へ行った弟」その3です。


弟は二番矢に歯くそをべったりつけて、はっしと射こんでみました。


するとみごとに突きささって、怪物はオーオー泣きながら、逃げてしまいました。


「わはははは。勝ったぞ。兄さん、もう木からおりてよかど。」


その晩、二人はお宮に泊って夜明けを待ちました。


夜が明けたので、二人があたりを見ると、ヘゴの茂みの下に、点々と真赤な血が地面をはっています。


二人はその血のあとをつけてみました。


やがてその血は地面にぽっかりおいた大きな穴に消えていました。


穴の中からは大きなクズカズラが生え上ってきていました。


兄を上に待たして、弟は一人、カズラにしがみついて穴の中におりていきました。


ずっと下までおりきったところに、一人の女がシクシク泣いていました。


二十歳ばかりのきれいな女です。


「おまえはどうしてここにおるのか。」


「はい。私はここにつれてこられたもので、やがて食われてしまうのです。」


「その化けものはどこにあるのか。」


「あっちにいます。」


弟が行ってみると、大きな蜘蛛が自い太い巣を張って、その中心で、うんうん、うめいているのです。


「わいやったか、うぬぬ。えいっ。」


弟は刀をふりかざして、力いっぱい、蜘蛛に切りつけて、息の根をとめてやりました。


そして蜘蛛の指を一本切りはなしてそれを持って、それから女を背負ってカズラをよじ登りました。


穴の外に出ると、兄が、


「この女子は何ものか」


と聞きました。


地下の国へ行った弟 2

屋久島の民話「地下の国へ行った弟」、その2です。


「こァ、大変なことじゃ。こげんどっさいの骨があるところを見れば、たいそう強かものじゃ。」


弟がこういってあたりを見まわすと、向うにガジュマルの大木が立っているのが目につきました。


「あそこに登ってあれば大丈夫じゃろう。」


そこで、二人ともガジュマルによじ登りました。


そして夜飯もガジュマルの上で食べて、夜になるのを待ちました。


やがて夕やみが追ってきました。


「兄さん、おまえは弓をひいたり刀を抜いたりしないでもよいから、どんなことがあってもこの木にしがみついておれな。」


弟はこういって、兄を上の安全な場所におき、自分は下の一本の枝に馬乗りになって、夜がふけるのを特ちました。


真夜中ごろ、バリー、バリー、バリー、バリと、木の枝が折れる音がして、何か出てきました。そして、


「ヒヒヒヒ。今晩はよかえさがまわるわい。ヒヒヒヒ」


と気味わるくつぶやくのでした。


「ふん、ふん、ぷん、この木に登ってるらしい。」


怪物は鼻でかぎながら、兄弟の登っているガジュマルの木に、ドッシン、ドッシンと背中をぶちあてるので、木の枝は大風のときのように揺れます。


弟は、両足を枝にまきつけてふり落されないようにして、弓に矢をつがえました。


そして怪物めがけて、ひょうと射ました。


とこうが、ぼっと火が燃えるばかりで矢は立ちません。


このとき、ふと、


「こんなものを射るときは人間の歯くそを矢につけて射ればよか」


ということを思いだしました。


地下の国へ行った弟

屋久島の民話に、「地下の国へ行った弟」というものがあります。


おもしろいので紹介しますね。


むかし、むかし。


ある村で、兵児侍たちが、毎朝、弓をひいたり刀のけいこをしたりしていました。


あるとき、兵児侍のかしらがいいました。


「ここから五里先のお宮に、一晩でも泊って、もどった人がまだ一人もおらん。


おまえたちの中で、だれかそこに行く人はいないか。もし行ってぶじもどってきたら、おれたちの持っている刀や槍を全部その人に上げようと思うが、どうか。」


かしらの意見にはみんな賛成でしたが、だれも自分が行こうという人はおりません。


「だれかお宮に行く人はおらんか。」


かしらの声がひびきました。すると、兵児の中から、


「おれが行くが」


と名のりでたものがあります。見ると、兄と弟の二人です。


さて、兄弟はさっそく家にもどって、


「おっ母ん、おれたちが一日で食うだけのにぎりめしをつくってくれ」


とたのみました。


兄弟はにぎりめしを持ち、刀と弓矢を持って出かけました。


野を越え、川を渡り、お宮めざして行きました。


やがてお宮に着いたので、そこを一まわりしてみました。


ところが、


「あっ。」


思わずあとへさがりました。


草むらに人間の骨が真白になって横たわっています。


よく見ると、あっちにもこっちにもころがっているではありませんか。


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