地下の国へ行った弟 4
屋久島の民話、「地下の国へ行った弟」その4です。
「この人は、前々の晩に、化けものがつかまえてまだ食わなかった女子じゃ。」
「化けものは殺したか。」
「うん。息の根をとめたから大丈夫じゃ。わざわいか太か山コブ(蜘蛛)じゃったよ。」
「そうか。そいじゃ、もう、もどろうか。」
「いや、ちょっと待ってくれ。山コブの頭の中に光る玉がはいっておったが、あれを取ってくるから。」
弟はふたたび穴の中にありて、山コブの頭を切り割って、玉を漁ぎ取りました。
そしてカズラにしがみついて登りなした。
「ほァ、兄さん、山コブの玉じゃ」
と弟が片手で玉をさしだしたとき、兄はその玉を取るやいなや、弟がまだしがみついているカズラをばっさり切ったからたまりません。
弟は、ドドーと音を立てて穴の暗やみの中に落ちていきました。
しかし、不思議なことに別にケガはありませんでした。
「主ばかりよかことをやろうかと思うて、ほんとうになさけないもんじゃ。」
弟は残念でたまりません。
しばらく泣いていましたが、ここで死ぬより、何とかぬけだす方法はないものかと、穴の中をぐるりとまわってみました。
隅のほうに人間一人はいるくらいの穴がありました。その穴にはいってみました。
「あっ。」
弟のからだは、どんどん落ちて行きました。そして、いやというほど尻を打って止まりました。
痛くてしばらくは立てません。
そのうち空腹をおぼえてきました。
ようやく立ちあがって、まわりをよくよく見ると、不思議なことに向うに広い世界がひらけているのです。